広域分散化するデータや情報をネットワーク型データとして扱い,(I)部分情報からのネットワーク全体推定法,(II)ネットワーク構造を利用した信頼度算出法,(III)視認性の高い情報提示法の三つの手法からなる信頼度付き情報取得システムの開発を試みている.本年度は,(I)と(II)に関して,昨年度開発した前処理的リンク予測手法とTrustRank法を融合し,リンク構造に基づいた場合に,情報の信頼度が大きく変化するノードを発見する方法を構築した.これにより,欠損したリンク情報の推定とともに,効率的にノード上の情報が精査できることを示した.また,ライングラフの考えを用いて,前処理的リンク予測手法をノード予測へと拡張できることを示した.一方,時間変化するリンク構造をもつネットワーク型データに対しては,TrustRankから求める信頼度の局在化の問題はより大きなものになる.これまで,この欠点は解決できていなかった.自己組織化マップを用いた新たなクラスタリング手法によって時間的にクラスター間を移動するノードを顕在化するという方法によってこの問題の解決を試みた.提案手法によって,注目すべきノードが限定され,信頼度の推定精度が向上されうることを示した.(III)に関しては,ネットワークの統計的指標に基づく新しい力学モデルによるグラフレイアウト手法を構築し,コミュニティ構造の表出化に成功した.これまでに提案した要素技術をJavaによる基本ライブラリとして整備し,Processingを用いたプロトタイプシステムを試作している.プロトタイプシステムを部分的に利用したものではあるが,効率的,かつ頑健な電力網の設計への応用,TrustRankではなくPageRankによる重要度を用いたものであるが,視線分析への応用を試み,提案手法の有用性を確認している.
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