近年の計算機技術の進展により、大規模な映像コーパスを構築できる時代になっている。映像コーパスは、映像検索や映像理解のための知識源として有用であると考えられるが、これまでの取り組みから、映像コーパスを活用するには、テキスト処理における辞書に相当する『ビデオオントロジー』の構築が不可欠であることが明らかになっている。では、そのようなビデオオントロジーをどのようにして構築するかであるが、原始的ではあるがひとつひとつ人手で積み上げていくしかない。本研究の目的は、このような知識の積み上げを効率的に行うための『共同利用型テストベッド』を実現することにある。ビデオオントロジーの構築に必要とされる映像コーパス、計算機クラスタ、Ground Truth作成環境を多数の研究者が効率的に利用可能なプラットフォームを実現することで、ビデオオントロジー構築のハードルに対して突破口を開くことを目指している。平成21年度には、予備実験を行いつつ、テストベッドの基本設計を進めた。ビデオオントロジーの仕様を決定するとともに、テストベッドの利用者側(研究者側)の要求条件を調査しつつ、どのような機能を実装することが効果的であるかを検証した。具体的には、以下に述べるように、2種類のソフトウェアプラットフォームと2種類のデータベースの構築が必要であると考えている。ソフトウェアプラットフォームは、テストベッド中核部とGround Truth作成環境から成り、前者は、研究者へのユーザインターフェイスを提供するとともに、映像コーパスを始めとするコンポーネントを統合する。後者は、オペレータへのユーザインターフェイスを提供するとともに、Ground Truth作成に係わる業務全般を支援する。一方、データベースとしては、ビデオオントロジーとGround Truthの2種類のデータベースが必要であると考えている。
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