研究課題
本研究は、ビデオオントロジーの構築に必要とされる映像コーパス、計算機クラスタ、Ground Truth作成環境の3者を、シームレスに統合したプラットフォームを実現することにより、ビデオオントロジー構築のハードルに対して突破口を開くことを目的としている。最終年度となる本年度は、これまでに構築したテストベッドの整備を進めるとともに、その有効性を確かめるための実証実験として、震災後のテレビ報道におけるニュースショットの分類と分析を行った。具体的には、テストベッドを用いて放送映像で使われたショットを分類・分析する環境を構築し、ニュースショットの出現傾向の分析を行った。ショットの検出は計算機クラスタを用いた自動処理によって行い、ショットの分類は専用のGround Truth作成環境を作成し目視による人手の作業によって行った。東日本大震災後の半年間のNHKニュース7(延長時は先頭の30分間)に対してショット分類を行ったところ、学生アルバイト6人で分担してのべ約200時間の作業を必要とした。そして、得られた分類結果を用いてショットの出現傾向について分析した結果、モノローグや説明用補助資料の出現頻度はニュースの内容によって大きく変動することがあり、震災後のテレビ報道の中では、特に原発事故の報道において顕著に現れていることが明らかになった。この結果は、テレビ報道において視覚的情報がどのように活用されているのかを考察する上で具体的かつ客観的な手掛かりになるものと期待できる。また、本実験は、映像コーパス、計算機クラスタ、Ground Truth作成環境を統合するという本研究の目的を実現したものであり、半年間に渡る大量の放送映像に対して俯瞰的な考察を可能にしている点に大きな特徴と意義がある。
すべて 2012
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情報処理学会研究報告「情報基礎とアクセス技術(IFAT)」
巻: 2012-IFAT-106(6) ページ: 1-8