1 計測システムの構築 前年度に確立された力-変形関係の計測手法およびインパルス応答計算手法を統合して、計測システムを構築した。対象の変形特性を網羅的に計測するためには膨大な点数の計測を行う必要があることから、この過程の自動化を検討したが、変形に応じて力の作用点位置を変更する処理の自動化が難しいことから、手動による計測システムを構築した。シリコンゴムのモデルに対する計測を行い、このシステムでインパルス応答の計測が可能であることを確認した。 2 力作用点および変位計測点の選択方法 できるだけ少ない計測点数で対象を効果的にモデル化する手法を検討した。変形は対象物の形状や力の作用点によって異なり、対象物表面上を常に均等に計測することが適当とは言えない。計測により網羅的に得られたインパルス応答データのうち、作用点および計測点が近傍にあるものについては、インパルス応答が相互に類似している傾向があり、これらを代表となる作用点・計測点の組のデータの時間シフトおよび変位スケーリングにより近似的に表現することができると考え、これにより、全体の変形を代表組のデータのみで表現することを試みた。シミュレーションによる実験の結果、計測すべき組を1/10から1/100に減らすことができることが確認された。この近似手法は、データ量の圧縮の面でも利点がある。 3 モデル精度の改善 冗長計測を行うことで、変形データの分散などの統計的指標をもとに、モデルの精度やデータの安定度の向上を試みた。対称性のある物体においては、網羅的な計測結果には、複数の等価な組についての計測が含まれている。これらの等価な組は、対称面についての鏡面変換または対称軸についての回転変換により、本来は相互に一致するものであるが、実際には計測の誤差によりずれが生じる。これらを平均して用いることによる、インパルス応答の平滑化の効果を確認した。
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