研究概要 |
昨年度案出、試作した分離クロスミラー型再帰透過素子について,交差角度を変化させながら再帰透過光の精度を評価した.一定の入射角下では予想されるとおり,交差角度に応じて再帰透過光の正しい値からのオフセットが変化し,90度から一定のオフセットを持つ交差角度において入射角度を変化させても,透過光の角度オフセットはほぼ変わらないことが示された. また,試作した分離クロスミラー型再帰透過素子の欠点は、短冊鏡列と,それを埋め込んだ板面の直交精度が確保出来ていないことであることが判った.これは試作加工時には保証されている点であるため,微細構造が経時変化、温度変化などにより歪んだ物ではないかと考えている.この点は,微細構造を埋め込む方式や母材の材質などを工夫することにより改善可能であるとは思われるが、将来にわたり注意すべき重要な点である. 一方,曲面化、広視野角化については,シミュレーションによる光線追跡を行い、理論的に示唆された通り、構造の大きさが観察瞳か投影瞳径の小さい方より十分小さい(1/10程度以下)場合には、実像投影系の光路中に凸面鏡を挿入した場合と事実上同じであると考えて良いことを示した.これにより広視野設計には従来の方法を用いることができ,便利であるが,逆に従来の光学系と同様の制約を受けることが判った.従来の方法と異なるのは、(1)各要素の大きさに起因するボケ,(2)離散要素を用いることによる空間配置の自由度、である.(1)については,光学系全体の設計とは別に評価することが出来る.(2)については,製造上の制約、形状の制約化という従来より遥かに弱い制約下での設計問題であるという点で、自由曲面プリズムの設計と類似である.この設計論については要検討である.
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