過去に実績のある6mmサイズから、約1mmサイズにまで小さくしたコーナーキューブアレイを、機械切削と研磨により試作、虚像プロジェクタを構成した。残念ながら、十分に機能する虚像プロジェクタとはならなかった。この件から判明したことは、1. 通常の機械加工では、1mm大で1分精度の面を作るのは困難、2. 光学計測無しに機械精度だけでは、特に研磨の段階で誤差が大きくなること、3. 個々の光学構造精度を光学的に計測することは、1mm大であっても困難であること、である。 小さい構造を作るためには、機械加工でもナノ切削と呼ばれる方法が有効ではないかと考えた。ダイヤモンドバイトを用いれば、研磨プロセスなく切削だけで鏡面を構成できる。ナノ切削により短冊形ミラーアレーを試作し、これを2枚、直交するように重ね合わせ再帰透過性を実現した。精度が要求されるのは、ミラー列の平行度、平面度だけであり、3つのミラーの相対角度全てを制御するコーナーキューブプリズムに比べ有利である。実際、プロジェクタとの組み合わせにより虚像が結像することを確認し、また、直交精度の悪化が直接画像のボケを引き起こすことを確認した。つまり、再帰透過の乱れ角を制御できる再帰透過材を製作し、乱れ角とボケの関係を証明した。 以前作成した斜対向コーナーミラーメッシュの光学シミュレーションを行い、有効な光の経路を明らかにした。光はごく一部の経路を通ることが判り、対向コーナーミラーで高い精度を確保しておくべき部分は小さいこと、一方光の利用効率にはこの点で限界を生じることが判った。 コーナーキューブアレイ、斜対向コーナーミラーメッシュ、コーナーミラーアレイを用い、運動視による推定を用いて虚像結像位置を実験により調べた。投影距離と結像距離は比例関係ではあるが、いずれも理論値よりは遥かに近い場所に結像していることが判った。この件は今後理由を解明を要する。
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