研究概要 |
記憶障害者や認知症者の意欲創出や注意誘導を可能とする行動支援メディアを実現するため,24年度は認知症者の注意誘導技術について,擬人化エージェントと人との視線コミュニケーションを用いた手法の効果の検証を継続した.注意誘導に関して20名の認知症者に対して,23年度に若年者,健常高齢者で実施したのと同様な実験を行った.ただし事後のアンケートについては,内容の理解が困難な被験者が多かったので,音声と文字,音声と矢印,音声と擬人化エージェントのいずれが好ましいかについて応えて貰った.また反応時間をビデオ解析によって比較した.結果,最も好ましいと感じたのは音声と視線コミュニケーションであった.また反応時間には優位な差は見られなかったが,擬人化エージェントと矢印でやや早くなる傾向がみられた.次に10名の健常者にたいして,上記の実験系をfMRIの視覚刺激に落とし込んで,脳活動イメージングにより賦活部位に違いがあるかを検証した.その結果,擬人化エージェントでは紡錘状回,角回の反応が見られた.紡錘状回は顔認知,角回は感覚刺激の統合に関わる領域であり,擬人化エージェントが文字や矢印よりも強力に注意を誘導していることが示唆された.また意欲創出技術については,若年者10名,健常高齢者10名で実験を実施した.タスクのパフォーマンスやアンケート結果に有意差は現れなかったが,被験者の行動分析の結果,擬人化エージェントの声かけに対してポジティブに反応している被験者が多いことから,擬人化エージェントとの視線コミュニケーションは意欲創出に有効であることが示唆された.
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