研究課題/領域番号 |
21300051
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長尾 確 名古屋大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (70343209)
|
研究分担者 |
大平 茂輝 名古屋大学, 情報基盤センター, 助教 (60339695)
|
キーワード | モビリティ / エージェント / 知能ロボティクス / 自律走行 / 安全性 / ナビゲーション / 個人用知的移動体 / 美術館案内 |
研究概要 |
個人用知的移動体(personal intelligent vehicle)は、情報端末の発展形として考案された移動型情報マシンであり、個人の能力を拡張して社会に適応しやすくする。本研究で提案する手法は、個人に適応した情報環境を人間と一体化させ、個人の情報処理機能だけでなく身体機能をも強化して日常生活をより安全で快適なものにする。本研究では、全方位に移動可能な個人用知的移動体を製作し、センサーによる障害物回避や環境とのインタラクションに基づく安全なナビゲーションと自律走行、搭乗者の状況認識を支援し、その行動を支援する仕組みを設計・開発し、実機による実験で詳細に検証した。 人間の実世界での活動と連動しながら、個人に特化された情報が与えられる必要がある1つの例として美術館を取り上げた。実世界の美術館において、各利用者に適応する情報を、利用者の活動に連動させて提示することで、われわれの生活する実世界と情報の世界をシームレスにつなぐことができる。本研究では、既に効果的な鑑賞方法を熟知した美術の専門家ではなく、美術鑑賞の初心者を主な対象とし、開発した個人用知的移動体を用いて、実世界の美術館において利用者1人1人の鑑賞体験を豊かにするシステムを提案・構築した。利用者が予め設定した美術館滞在時間に合わせて、システムが生成した鑑賞コースを、移動体が利用者を乗せて自律走行し、コース上のいくつかの作品の前で停止する。作品の前で停止中に、利用者は作品に関する解説を、手元のディスプレイに提示される画像と、ヘッドフォンから流れる音声で視聴することができる。 本研究で構築したシステムにより、利用者の過去の記憶と新しく出会った作品を結び付けることで、美術鑑賞の初心者でも、作品を見て様々なことを考えることや、より強く印象に残る作品を増やしていくことが可能となった。このように、搭乗者である人間は、移動に伴う負担を感じることなく、実世界状況や文脈に合わせて、その時点で最適なサービスを受けることができることが実験によって示された。
|