研究概要 |
本年度はマルチモーダル説得エージェント開発のための要素技術として言語的説得技術と非言語的説得技術の開発に取り組んだ.言語的説得技術に関しては,Wizard of Oz法を用いた説得会話エージェントを開発し,説得の手順を表現する説得戦略を実装できるようにした.Wizard of Oz法ではWizardと呼ばれる人間がエージェントの代わりに利用者と対話する方法で,通常は利用者との対話はエージェントが行うが,その返答内容が不適切であったり,返答できなかったりする場合にはWizardが代わりに返答する.エージェントは対話モデルを介して,Wizardの返答を学習し,対話モデルを構築してゆく.説得戦略を表現する対話モデルは複数のフェーズから構成される.説得戦略を導入することにより,エージェントの説得性能が向上するだけでなく,Wizardの負荷も軽減することが評価実験により示された.これは説得会話の副目標が明確にWizardに示されるためである. 非言語的説得技術の開発に関しては話速可変チャットシステムに基づくコミュニケーション評価システムの開発を行った.従来のチャットシステムでは入力文が一度に表示され,非言語情報を表出することは難しかった.話速可変チャットシステムでは入力文を一文字一文字表示することができ,文字対話であっても非言語情報を表出することが可能である.本年度はこのような話速可変対話がコミュニケーションにどのような影響を与えるかを調査するための評価システムを開発した.本システムでは二名の被験者が連想ゲームを行う.一定時間経過後に締め切り時間を伝えることで出題者に焦りの感情を起こさせる.話速可変チャットシステムと従来のチャットシステムを比較することで,出題者の焦りがどのように回答者に伝わるのかを調査することができる.
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