研究課題/領域番号 |
21300057
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
北村 泰彦 関西学院大学, 理工学部, 教授 (00204917)
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研究分担者 |
角所 考 関西学院大学, 理工学部, 教授 (50263322)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 説得エージェント / マルチモーダル / マルチエージェント / 仮想マラソン |
研究概要 |
本年度は研究計画の4年目にあたり,これまで開発してきた説得に関する技術を評価するためのプラットフォームづくりを主な目的とした.説得技術の具体的な応用領域として,健康増進を目的とした仮想マラソンシステムとして設定し,その予備評価を行った. 仮想マラソンシステムはAndroidスマートフォンのアプリとして実装されている.スマートフォンを持ってランニングを始めると,GPSにより走行距離が測定され,マラソンコース上のキャラクタがその距離だけ移動するようになっている.ユーザインタフェースとしては,(a)地図表示,(b)航空表示,(c)ストリートビュー表示,(d)ラップタイム表示の4種類を用意した.さらに,複数のユーザがコース上で仮想的に競争できるように,疑似リアルタイム競争機能を実装した.これはユーザの走行データがサーバ上に転送され,後でスタートしたユーザの端末上に,先にスタートしたユーザのデータを同時にスタートしたかのように表示することで疑似リアルタイム的な競争を可能にしている. まず大学生20名を対象に仮想マラソンがどのような人に対して効果があるかを評価した.その結果,普段から歩行・走行量が多いユーザに対してより良い運動促進効果を与えることが分かった.また対象とした神戸マラソンコースを知っている人ほど運動の動機づけになっていることが分かった.ユーザインタフェースに関しては地図表示がもっともよく利用されていた.ストリートビューはスマートフォンのため表示範囲が狭く見にくい,また航空表示も地図表示に比べて見にくいとの意見が得られた.疑似リアルタイム競争に関しては大学生16名を対象に有効性を確かめた.疑似リアルタイム機能を有するアプリの利用者とそうでない利用者で比較を行った.その結果,両者に大きな差は見られなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はマルチモーダル説得エージェントの要素技術として,言語的説得技術と非言語的説得技術の開発に取り組んできた.これまで言語的説得技術としては,言語による説得手順を学習するWizard of Oz法に基づく学習エージェントの開発を行った.非言語的説得技術としては話速可変チャットシステムを開発し,その印象評価を行った.また複数のエージェントによるマルチエージェント説得技術として,集団同一視とエージェント数の効果を調査し,効果的に説得できる条件に付いて議論した.前期3年間はそれぞれ個別の説得技術について研究を進めてきた.最後の2年間は具体的な応用分野を設定し,説得技術の有効性の評価を行う.そのために本年度においては,説得技術を評価するためのプラットフォームとして仮想マラソンシステムを完成させることができた.対象として,マラソンを選んだ理由としては,走行距離という形で説得の効果が明確に得られること.また健康促進という社会的ニーズに沿っていることがあげられる.最終年度は,そのうえで,言語的説得,非言語的説得,マルチエージェント説得などの各説得手法を評価して,本研究計画の締めくくりとしたい.
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今後の研究の推進方策 |
今後は仮想マラソンシステムを用いて,以下のような評価を行う. 1.言語的説得技術:仮想マラソンシステムに利用者の位置や順位,周囲の状態などを音声で利用者に伝える機能を追加し,どのような情報を利用者に伝えることが運動促進につながるのかを明らかにする. 2.非言語的説得技術:仮想マラソンにおける非言語情報としては,他の競争者との位置関係が考えられる.運動を促進するためには,競争相手が先行する方がよいのか,追い上げてくる方がよいのか?切迫感がある方がよいのか,あるいは穏やかな方がよいのか?さらに,集団のなかでどのあたりに位置するのがよいのか,などを利用者のパーソナリティとの関係性を含めて,明らかにしていく. 3.エージェント説得技術:仮想マラソン上での人間同士の競争だけでなく,人工的なペースメイカーエージェントの開発と導入を行う.エージェントのふるまいに対する利用者の反応を測定し,運動促進に適したふるまいをエージェントができるようにする.ペースメイカーエージェントは単一の場合,また複数エージェントからなるチームとしてふるまう場合を評価する.
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