研究課題/領域番号 |
21300069
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
入野 俊夫 和歌山大学, システム工学部, 教授 (20346331)
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研究分担者 |
河原 英紀 和歌山大学, システム工学部, 教授 (40294300)
津崎 実 京都市立芸術大学, 音楽学部, 教授 (60155356)
西村 竜一 和歌山大学, システム工学部, 助教 (00379611)
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キーワード | 聴覚計算理論 / ガンマチャープ聴覚フィルタ(GCFB) / 寸法・形状知覚 / 高品質音声分析合成系STRAIGHT / 音声信号処理 / 聴覚心理実験 / 声道長正規化 |
研究概要 |
音声知覚の基盤となる聴知覚の計算理論構築/モデル化を目標として、以下の課題を実施した。 1.寸法・形状知覚:通常発声とささやき声の違いを明確にする寸法知覚実験の論文が、音声分野で有力な論文誌の条件付受理となった。また、寸法知覚の時間限界に関しての実験や、寸法が音源パルスごとに交替する最短時間条件の場合の音脈分凝実験を推進した。これらの成果を、国内はもとより聴覚分野で有力な国際会議AROで発表した。 2.聴覚フィルタ特性/難聴者・健聴者の聴知覚特性:聴覚フィルタの周波数特性と圧縮特性を、非対称レベルマスカを導入したノッチ雑音同時マスキング法により同時推定する新手法を提案した。この圧縮型ガンマチャープ聴覚フィルタバンク(GCFB)を用いた手法の有効性を、健聴者の測定実験データからの推定精度の向上から示した。また、健聴者が難聴者の聞こえを体験できる「模擬難聴」用の信号処理手法をGCFBの枠組みで開発することに成功した。聴取者の特性推定と難聴信号処理が統一したGCFBの枠組みでできることを示した従来にない画期的な進展である。 3.機能的磁気共鳴像(fMRI)実験:前年度スキャンした画像データに関して様々な角度から検討を加えたが、すっきりとした結論が得られなかった。このまま同じパラダイムで継続しても成果を期待できそうにないため、休止の判断を行った。 4.音声知覚モデル化/音声・音響処理:異性間音声モーフィング品質の向上のため、声道長(寸法)推定/正規化を、GCFBを用いると従来手法より高精度化できることを示し、論文化と国際会議発表を行った。さらに、大人・子供の自動判別の高性能化もGCFBで可能であることを示した。これらは、知覚特性を的確に模擬する聴覚モデルが工学的応用でも有効であることを示す画期的な成果で、今後の音声信号処理にブレークスルーをもたらす可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.寸法・形状知覚特性に関しては順調に成果報告をし、論文化を進めた。2.聴覚フィルタ特性に関しては、新規推定方法の実証を行い、さらに模擬i難聴を提案するなど当初の計画以上に進展している。3.fMRI実験に関しては、鋭意分析・検討を進めたが結果が思わしくなく進んでいない。4.音声知覚モデルや音声音響処理に関しては、新規の声道長推定手法や大人子供自動判別に関し、計画を上回る優れた成果を挙げた。以上の進捗の最も良い部分では(1)であるが、平均的に見ると(2)が妥当と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、実験を実施することにより確実かつ順調に成果を挙げている1.と、先進的な成果が挙っている2.と4.の課題に重点を置き進める。3.のfMRIに関しては、実験パラダイムの再構築が必要と考えられるため、残り期間における成果を期待できない。具体的な成果の期待できる課題(1,2,4)に集中的に取り組む。
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