研究概要 |
本研究では連続音声の生成原理に関する観測法の開発,シミュレーションによる現象の理解,それらの知見を活かした音声合成技術の開発を目指している.初年度は以下の検討を行った. 1.磁気共鳴画像法(MRI)による発話形態撮像法の検討:普段の発話に近い状態を計測するための短時間撮像法について検討し,いくつかの測定を行った. 2.磁気センサ方式(EMA)による発話動態計測:MRIよりも時間分解能が高い(ただし空間分解能は低い)観測手法であるEMAを用い,連続音声の発話動態を計測した.今後,MRIとEMAのお互いの利点を活かす観測法を検討する. 3.External lighting and sensing photoglottography(ePGG)の試作及び改良:頸部の皮膚を介して声門上部に光を入力し,声帯開閉により透過する光を再び頸部の皮膚を介して測定することにより声門振動の観測を行うePGGの試作を行った.光源,受光センサ,回路について改良を続けている. 4.時間領域差分法(FDTD)による声道音響解析:3次元FDTDによる声道音響解析プログラムを作成し,研究代表者が先に行った声道実体模型の音響計測結果を用いて精度を評価した.また,マルチコアCPUとGPGPUの利用によるプログラムの高速化も検討した. 5.Navier-Stokes方程式に基づく摩擦音生成過程のシミュレーション:Navier-Stokes方程式に基づく2次元平面上の流体音響解析プログラムを開発し,摩擦音生成時の声道形状を簡略化した解析空間を対象にしてシミュレーションを行った.今後,より精密な2次元声道形状,さらには3次元声道形状を対象にした解析を行う. 6.音響音声学研究会の開催:StevensのAcoustic Phonetics(1998)に関して議論を行う研究会を8回開催し,音響音声学における理論の現状について討論した.
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