研究概要 |
本年度は,第1に,空間分解能の高いMRIと時間分解能の高い磁気センサ方式を組み合わせ,空間分解能と時間分解能を有する発話動態観測法を検討した.基礎的なアルゴリズムの開発を終了し,実験に成功した.第2に,MRIデータから声道断面積関数を抽出するフリーソフトウェアの開発を行った.これは世界的に利用者の多い画像処理ソフトウェアImageJのプラグイン(拡張機能)として作成した.従来,音声生成研究を支援するこのようなソフトウェアが存在しなかったが,本研究によってこの分野の研究の促進が期待できる.第3に,時間領域差分法に基づく声道音響シミュレーションを行い,過去に測定された声道模型の音響特性と極めてよく一致することを示した.この成果は,世界的に権威のある米国音響学会誌に掲載された.また,画像処理ユニット(GPU)を用いた並列計算により,一般的なCPUを用いた場合の数十倍の速度でシミュレーションできるシステムを開発した.第4に,流体方程式による空力音響モデルの構築を目指して,これに係わる物理的および数値解析的な諸要因を検討した.今年度は新たに境界適合格子と有限体積法を用いた2次元直接数値シミュレーションのプログラムを開発し,これによる数値実験を行いつつそれらを検証した.第5に,従来の光電グロトグラフィ法(PGG)の問題点を解決すべく外部光源を経皮的に投光する非侵襲のPGG法(ePGG:external lighting and sensing PGG)を検討した.赤外線LED(880nm)を光源に用いてS/N性能を改善し,語頭の無声子音で声門開大が顕著になる現象を観測した.第6に,動画MRIで観測された舌運動の効率的な解析手法を開発し,有声・無声子音の調音運動を比較した.
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