研究概要 |
平成21年度は,本課題が最終的な目標としている道具使用について,基礎評価実験を行った.具体的には,本課題が着目している道具身体化の基礎モデルを構築し,その評価を行った. 本年度の課題は,(1)ロボット身体のモデル化,(2)使用道具に合わせた身体モデルの変換,の点である.ここで,身体モデルとは視覚,動作などに関する順逆モデルをさす.これらの課題に対して,以下のようにアプローチした.(1)ロボットの身体モデルを神経力学系モデルにより学習,(2)ロボットが道具使用している際,この拡張された身体を,道具を把持していない基本身体モデル,を変換・拡張した"道具身体化モデル"として表現する.具体的には,基本身体モデルを表現する神経力学モデルを変調する変換モジュールを付与し,これを多種の道具毎に学習させる.本モデルを用いることで,ロボットは把持している道具の認識を行い,それを用いた動作の生成が可能になる. ロボットの身体モデルを,時系列データを学習可能な,Multiple Timescale Recurrent Neural Network (MTRNN)に学習させた.また変換モジュールとしてParametric Bias (PB)を入力に持つ階層型人工神経回路モデルを用いた.この変換モジュールの出力値を,MTRNNの結合重みとする(二次変換)ことで基本身体モデルを拡張した道具身体化モデルを実現した.利用道具ごとにPB値を変更して学習させ,PB空間上に道具特徴を表現させた.ロボットは道具を利用する際,最初に"試し振り(能動知覚)"を実行することでPB値を同定する. 基礎実験としてヒューマノイドロボットHRP-2を利用し,単純な形状の道具を用いて卓上複数物体を移動させるタスクを設定した.HRP-2は道具未使用時,およびT字型及びL字型の棒状物体を手に装着した状態で,複数の移動動作を学習する.実験の結果,本モデルを利用することで既知の道具だけでなく未知の道具(I字型道具)を利用した際でも,物体挙動の予測が可能となることを確認した。
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