研究概要 |
平成22年度は,物体予測識別の重要要素となる,音響信号の神経回路によるモデル化,及び,道具使用の基板となる道具身体化モデルにつながるための,身体モデル(身体図式)の獲得の2点を中心に研究を展開した. まず音響信号のモデル化では,物体が伴う音の学習・識別モデルの構築を目的とし,特に1.少数データでの認識率向上,2.未知音の識別,の問題に取り組んだ.具体的には神経力学モデルを用いた環境音予測識別システムの基本アーキテクチャを提案・構築した.このモデルは複数の学習時系列の構造を再帰ニューロンの初期値に自己組織化出来る.実験では,RWCP環境音DBから20クラスを選び,そのMFCCデータ系列を学習させた.10クラス100サンプル中4つのみを学習に利用し,残りの10クラスを未知とした実験を行った結果,神経回路モデルの初期値空間が未学習の環境音にクラスタをも自己組織化可能であることが確認された. また身体モデルの獲得についても,改めて脳科学における内部モデルを利用した,自己領域発見のモデルを提案構築した.従来研究では運動指令値と視覚を相関学習させるため,視覚中の身体位置が既知であることが前提であった対して本手法は「予測(操作)できる領域が身体である」という考えに基づき、運動指令値と視覚の関係を予測学習することによって画像中の他者と自己の身体識別を可能とした.具体的には神経力学モデルであるMTRNNに運動指令値及び自己と他者の身体を含む視覚情報を入力し予測学習させ,内部モデルを獲得させた.その内部モデルによる予測可能部分を自己身体とさせた.実験の結果,MTRNNは運動指令値のみから自己身体を他者身体に比べ平均10倍の精度で予測できることが確認された.
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