研究概要 |
平成23年度は,平成21年度に提案した道具身体化モデルの修正,及び拡張を中心に行った.具体的には,(1)2次変換神経回路(重みを出力する神経回路)の存在を仮定した不自然なモデルの修正,(2)道具の機能表現の自己組織化,(3)試行行為によって同定していた道具機能を画像から類推,以上の2点をモデルに付加した. ロボットの身体モデルとして神経力学モデルMultiple Timescales Recurrent Neural Network(MTRNN)を用い,視覚,動作などに関する順逆モデルの学習を行う.上記の3課題に対して以下の3つのアプローチを用いた.(1)(2)に対して,(i)2次変換神経回路の代わりに各層へバイアス入力を行う神経回路モデルを導入し,道具使用の経験(能動知覚)を通して自己組織的に道具機能を神経回路の発火状態に表現させる.(3)に対して,(ii)獲得された道具機能,カメラ視野内の道具形状,動作を階層型ニューラルネットで関連付けることにより,道具形状からその機能を推定・使用できるようにした. 構築した道具身体化モデルをヒューマノイドロボットACTROIDに導入し評価実験を行った.道具を用いた卓上物体の移動をタスクとし,使用道具としてI字型,T字型及びL字型の棒状物体を用いた.ACTROIDに素手,I字型,T字型を把持した状態で卓上物体の移動動作を学習させた後,道具の形状とタスク動画を提示することにより,タスクを達成する動作を生成させた.実験の結果,道具使用学習から道具特徴を自己組織的に獲得し,また既知道具だけでなく未知の道具(L字型)についてもその機能を形状から類推し,提示された動作の再現が行えることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題の最終的な目的である,道具使用,アフォーダンスに関するモデル化と実験は順調に進展している.むしろその基盤となるべき物体挙動予測が,既に提案モデルに内包される形で行為が生成できてしまっているため,物体挙動予測の機能を独立して抽出できていない,という言い方もできる.
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今後の研究の推進方策 |
現時点で開発済みの道具身体化モデルをさらに複雑な道具に迄,拡張させる事はむろん必要だが,むしろモデルの解析を進め,どのような獲得表現,また獲得プロセスが物体挙動予測,道具使用に重要であるのか,その特性を最終年で明らかにしていきたい.
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