研究概要 |
本研究の目的は弱視者の視認を支援することであり,目標とするシステムは視界に入っているが視認できていない(見えていない)対象に対して,視点先の画像を手元にある端末で拡大表示する,視点の誘導を音声で教える,といった機能を持つものである。弱視者の視界や視認を補完する映像シミュレータとして,これまで見過ごしていた標識や信号,各種の公共サインなどの確認を弱視者自身がその場で行うことができるので,歩行練習時の経路学習を効果的に行うことが可能となり,状況判断の大幅な向上が期待できる。 本年度は"視点映像拡大表示システムの開発"を行い,視点滞留部位の画像切り出しと拡大処理のプログラムを作成した。使用した眼球運動計測装置は,米国ASL社のMobile-Eyeを改良して直接パソコンに取り込めるようにしたものである。この視点追跡装置を使って,視線動画ファイルの連続フレームから弱視者の視認を解析するための視点軌跡の描画を行った。一般に,弱視者の視認時間は晴眼者より長いので,フレーム間の差分を考慮して,各フレーム画像が類似したときの弱視者の視線(視点)軌跡を描画するプログラムを作成した。視点映像拡大表示は弱視者の視線先を知る必要があるが,視線対象の検知は視点の滞留時間で捕えられるので,視線先領域における視点密度をフレーム積算して滞留時間を分析し,視点密度の高い箇所(視点滞留がある部分)の画像切り出しと拡大表示を行った。その結果,視認できない視点先を手元の端末で表示することが可能となり,これまで残存視力で見えなかった視線先を手元で視認できることが検証できた。
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