研究概要 |
本研究の目的は弱視者の視認を支援することである。目標とするシステムは視界に入っているが視認できていない(見えていない)対象に対して,視点先の画像を手元にある端末で拡大表示する,視点の誘導を音声で教える,という機能を持つものである。弱視者の視認を補完する視界映像シミュレータとして,これまで見過ごしていた標識や信号,各種の公共サインなどの確認を弱視者自身がその場で行うことができるので,歩行訓練時の経路学習を効果的に行うことが可能となり,状況判断の向上も大幅に期待できる。 本年度は視野狭窄や視野欠損を持つ弱視者に有効な支援である"視点方向誘導指示システムの開発"を行った。弱視者は視界にある対象を見つけ出すことが困難なので,代わりにシステムが対象を探す,すなわち,システムは視界画像内でのパターンマッチング処理を行うが,これは容易なことではない。第一の問題点として,例えば公共サインは統一されていない。トイレを示すピクトグラムさえも様々な種類が存在する。第二の問題点として,視界画像に対象が存在しないことをシステムが判断して探索を終了することが難しい。第三の問題点として,視界がある程度静止していないとパターンマッチングが極端に難しくなる。我々は,これらの問題を解決できるパターンマッチングとして,1)顔認識に類似した汎用性の高い識別アルゴリズムを用いること,2)学習機能を付加して誤識別を除外すること,を採用して,システムの識別能力を徐々に高めることで対象物を特定し,限定的ながらもある程度の視点方向の誘導が行なえることを確認した。
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