研究分担者 |
佐野 明人 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授 (80196295)
望山 洋 筑波大学, システム情報工学研究, 准教授 (40303333)
田中 由浩 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教 (90432286)
石橋 良太 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (20535835)
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研究概要 |
本研究では,人間の触覚メカニズムを考慮した力触覚フィードバックを有する柔軟な人工指を開発し,人間のタッチを実現することを目的とする.本年度は,昨年度から継続し,人工指関節への利用に向けた弾性体の飛び移り座屈を用いた閉ループ柔軟カタパルトの基礎検討,およびヒトの触知覚特性に関わる指内部構造に関する検討と人工指先の試作を行った. 昨年度の知見から,速順応型に属しヒトの機械受容器の中で最も敏感なパチニ小体が,皮下組織に多数存在する繊維周辺に複数個まとまって分布しており,皮下組織における脂肪と繊維の関係がヒト独自の指表面変形を生んでいる可能性が明らかになっている.そこで,サルの指から断面標本を作成し,膠原繊維や弾性繊維を染色し顕微鏡下で観察を行った.その結果,昨年度にヒト胎児の指断面標本で見られたようなパチニ小体の分布が同様に観察でき,さらに,パチニ小体が膠原繊維に囲まれるようにして分布している可能性も明らかになった.指内部構造を単純モデル化し,有限要素法により皮膚に対する機械刺激と内部応力の関係を解析した結果では,繊維周辺に強い応力集中が見られ,観察結果を力学的に支持する結果が得られた.また,仮説に基づくパチニ小体の皮膚内部における分布を考慮した振動閾値に関する心理物理実験では,皮膚表面における不均一な閾値分布を確認することができ,仮説を心理学的に支持する結果も得られた.さらに,皮下組織における脂肪と繊維に着目し作成した人工指においては,従来ヒト指でのみ発現し均一なゴム等では発現していなかった特異的な触知覚現象の発現を確認することができた.ヒト指の持つ機械的特性に近い人工指が作成できたといえる.
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