この研究は、ハイビジョン映像の約4倍の情報密度をもつ4K実写映像を試料とし、脳波特定帯域から推計する基幹脳活性化分析、脳イメージング、各種生理活性物質計測などの生理指標を多元的に用いて、高精細映像とりわけ4K映像の視聴効果を検討することを目的としている。 研究初年次にあたる平成21年度は、研究者らが開発した40分間の生理評価用4K映像を編集し、あわせてフルハイビジョン画質および標準画質の比較対照実験用映像素材を制作した。 これらを用いて、映像精細度の違いが人間に及ぼす影響について評価するうえで実績のある脳波α2ポテンシャルの変化を指標とする生理的評価実験を行い、4K映像視聴時には、ハイビジョン視聴時よりも基幹脳活性と相関する脳波α2ポテンシャルが統計的有意に増強されることを支持する結果を得た。さらに、脳波の時間的変化を分析して呈示映像の内容との関係を検討し、脳機能イメージングや生理活性物質分析実験において呈示する映像の吟味と、実験プロトコルの検討を行った。これらの結果に基づき、呈示用映像の改訂をおこなった。 知覚限界をこえる超高精細映像が人間に及ぼす効果をとらえるために、空間解像度にすぐれた脳機能イメージング手法として磁気共鳴機能画像撮像装置(fMRI)を用いることとし、実験室内での構成再映像およびそれに伴う音響の呈示システムを整備した。また、映像に対する視聴者の主観的印象を評価するために、一対比較法における評価指標を作成した。
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