研究課題/領域番号 |
21300091
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山田 功 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50230446)
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キーワード | 階層構造を持つ最適化 / Moreau-Yoshida近似 / ハイブリッド最急降下法 / Principal Component Pursuit / Tensor recovery / 適応射影劣勾配法 / Douglas-Rachford splitting / 一般固有値問題 |
研究概要 |
「階層構造を持つ最適化問題の解明と信号処理への応用」について下記の研究成果を得た(主な成果を抜粋する)。 1.一般固有値問題はアレイ信号処理やカーネル学習に応用を持つ重要な非凸最適化問題であるが、直交性が保証された固有ベクトル空間の基底が高い推定精度で推定できれば、固有ベクトルの上で最適化問題(階層構造を持つ最適化問題の例)を考えることができる。本研究では,[Misono & Yamada]のExact nested orthogonal complement structureを一般固有値問題に拡張することによって、新しい固有ベクトル空間推定法を提案し、この方法によって、直交性を保証しながら固有ベクトルを高い推定精度で推定できることを明らかにしている。 2.微分可能な凸関数と微分不可能な凸関数の和として定義された目的関数を最小化する反復アルゴリズムとして、Proximal Forward-Backward Splitting(PFBS)法が知られている。Proximal Forward-Backward Splitting法は目的関数の値を反復回数に反比例する速さで減少させることができる。最近、このアルゴリズムを修正したFISTAというアルゴリズムが目的関数の値を反復回数の2乗に反比例する速さで減少させるまで高速化できることが明らかにされた。本研究では、FISTAに現れる緩和係数の自由度がPFBSの半分になってしまうことに注目し、FISTAの高速性能とPFBSの緩和係数の自由度を両立させる新しい方法を開発し、その有効性を明らかにしている。 3.到来方向分布「任意に指定された方位区間から到来する信号数」を有限回の四則演算で直接推定可能とする2つの「代数的高分解能到来方向分布推定法」を提案している。2つの提案法は何れも「代数演算に潜む大域的な情報抽出機能」を積極的に活かした信号処理アルゴリズムとなっており、申請者等が開発した「代数的連続位相復元法」の非自明な応用により実現されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
A.非凸最適化問題の重要な例である一般固有値問題の解を「階層構造を持つ最適化問題の第1層の解」として扱う時には第2層の最適化に適した基底表現が必要となる。これまでに得られた一般固有ベクトル空間推定法は一般化された直交基底を与えることが保証されており、この難点をクリアしている。 B.非可微分凸関数の最小化問題の解集合を非拡大写像の不動点集合として表現できること、また、非可微分凸関数がそのMoreau envelopeによっていくらでも良好に近似できることが明らかとなり、信号画像処理の多くの未解決問題を非可微分凸関数によって表現された「階層構造を持つ最適化問題」として解決する見通しを得ている。
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今後の研究の推進方策 |
A.非凸最適化問題の重要な例である一般固有値問題の解を更に精度よく推定するアルゴリズムを開発する予定である。 B.非可微分凸関数によって表現された「階層構造を持つ最適化問題」として信号画像処理の多くの未解決問題を解決し、その効果を実証する予定である。
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