研究概要 |
本研究の目的は,人間の身体パーツの動きに含まれる協調構造を解析・抽出し,その構造を利用して障害者等の動作補助を行なう方式を開発することである.本目的の達成に向けて本年度は以下の研究を行なった. まず,身体運動の協調構造抽出のための非拘束身体運動計測システムを構築した.本システムを構成するセンサは,地磁気,加速度,角速度センサ等をモジュールにまとめたものである.本年度は,このセンサモジュールを次年度導入予定のものも含めて合計10個導入するとともに,センサ制御とデータ保存用の周辺装置を付加して身体装着可能な姿勢計測システムを構成した.現在,来年度以降の本格的実験開始に向けて,システムの調整を行なっているところである.本システムを用いて身体運動データを計測・蓄積することにより身体パーツの協調構造を抽出する統計的解析が可能になる. また,下肢麻痺患者の歩行を補助するシステムを開発するため,下肢に連動する上腕の運動に着目し,ユーザ(下肢麻痺患者)の意図する歩行パターンを予測する方法を検討した.具体的には,姿勢角度と加速度が計測可能な慣性センサを歩行器に取り付けて,「滑らかさの運動規範」に基づいて腕の加速度情報から意図された歩幅を推定した.健常者による歩行テストの結果,つま先の移動距離とその直前の腕の運動から推定した歩幅とがほぼ一致することを確認した.この結果は,歩行補助を実現する上で重要な結果である.これに加えて,コップの水をこぼさないで歩行しているときの身体各部の動きを計測し,手先のジャーク(加速度の変化率)の値が顕著に小さくなることを見出した.UCM解析を用いて各関節角度の分散を評価した結果,手先の角度が一定となるように腕の各関節の動きが協調していることが明らかになった. このほか,筋指令の協調構造を用いて腕の到達運動のための運動指令を生成する計算モデルを構築した.
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