研究概要 |
創発・閃きは、質的に異なる視点の齟齬・調停を原動力とすると考えられる。この二重性に関する解析方法を得るため、異なる二つの視点を、二つの同値関係で記述し、認識単位の粗視化に関する論理(ここではラフ集合誘導束と呼ぶ)を、同値類から生成されるラフ集合で誘導、構築した。この際、単独の粗視化からは古典論理に相当するブール代数のみが得られ、複数の粗視化が多義的に重なるとき、非ブール的な多様な論理(束)が得られる結果が得られた。逆に任意の論理(束)に対して、これを誘導する粗視化の対を得る方法を、表現定理としてまとめた。さらに、ラフ集合誘導束によって、セルオートマトンの大まかな分類が可能となること、ここから逆に、対応するラフ集合誘導束を変更するように、推移規則のブロック化を導入すると、セルオートマトンの挙動を劇的に変化させることができることを示した。セルオートマトンの安定なパターンを生成するクラス1,2のオートマトンと、カオスを生成するといわれるクラス3のオートマトンでは、束の分配性、相補性におおきな違いが認められた。実際クラス1,2のオートヤトンでは、高い分配性が得られた。逆に、クラス3に、分配性を高めるようなブロック化を導入すると、カオス的振る舞いを保存しながら、局所的に安定的振る舞いをする、クラス4の挙動が得られた。つまりクラス4といわれる挙動が、構成的に得られる方法が示された。また、クラス4的な挙動を示す真正粘菌パターンを形成する非同期オートマトンが構築され、真正粘菌の経路パターンを説明することができた。特に餌を適当な位置に配置して、全体を粘菌に覆わせ、その後できる田パターンを、効率と探索の両者の観点から調べると、トレードオフを弱め、うまくバランスしているという結果が得られたが、本モデルはこの実情を、ほとんどのパラメータ領域で実現することを示した。
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