研究概要 |
広島でICカード乗車券PASPYが加速的に普及し始めた.東京圏や関西圏の大都市にとどまっていた交通系電子マネーの地方都市での本格的な普及(流通系電子マネーを除く)が始まろうとしている.その機を捉え,普及過程を3年間定点的に継続して追跡し,電子マネーの利用動態や加盟店のサービス革新などのフィールド調査や利用者意識のネット調査などを行う.それによって,第1に,電子マネーの地方都市での普及条件を研究することができる.その研究はソーシャル・マーケティング論からアプローチする独創的な研究方法に特色がある.第2に,バス・電車の運賃支払いや小売店での小口電子決済にとどまらず電子マネーが引き起こす公共的なサービス価値の創造を実証研究する.電子マネーの公共性,ネットワーク性がもたらすサービス価値をサービスイノベーション論という新しい研究分野から挑戦する.第3に,そのサービスイノベーションを担う企業組織に着目した研究をすることも目的である. 初年度は,PASPY利用のフィールド調査(路面電車の拠点駅3ヶ所と主要結節点での電子マネーをもっ乗降客を対象とした定点的定期的観測)とネット調査(PASPYが初めて本格的に導入された広島県全域)を実施し,電子マネー利用者はどのようなセグメントに分かれるのか?電子マネーをいち早く使い始める人は,なぜ使うのか?(利便性,経済的メリット,社会規範,等).イノベーション普及論でいうイノベータやアーリーアダプターの行動を把握するデータを収集してきた. この調査データをもとに,利用者セグメントごとの電子マネー利用の規定要因を定量的に検証した.また,電子マネーを使う人,使わない人の理由をアンケートデータがら構造モデルを仮説構築することに努めた.
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