研究概要 |
本研究は.交通系電子マネーの地方都市での普及過程を定点的に追跡し,電子マネーの利用動態などのフィールド調査や利用者意識のネット調査などを行う.それによって,第1に,電子マネーの地方都市での普及条件を研究する.第2は,電子マネーの公共性,ネットワーク性がもたらすサービス価値をサービスイノベーション論から研究することが目的である. 初年度および本年度の2年にわたって,広島でのPASPY利用のフィールド調査とネット調査を実施し,電子マネー利用者のようなセグメント,利便性,経済的メリット,社会規範等.イノベーション普及論でいうイノベータやアーリーアダプターの行動を把握するデータを収集してきた.この調査データをもとに,利用者セグメントごとの電子マネー利用の規定要因を定量的に検証し,学会等で研究発表してきた,電子マネーを使う人,使わない人の要因をアンケートデータから共分散構造分析を行った.これらによって,電子マネーというプラットフォーム普及初期のイノベータ像は,先取り志向、新しもの好き、はやり指向で情報発信派の特性を持つ利用者の1%いると推定できた。これはロジャースらが各種研究で捉えたイノベータ像に合致している。 さらに、本年度では、上記の広島でのイノベーション普及がどのように拡張するかを比較対照するために、福岡都市圏でネット調査した。電子マネーの拡大プロセスを探るためである。福岡都市圏では異なる3つの交通系電子マネーが投入されたが、そのプラットフォームの共同化が試みられている。いずれの電子マネーでも小口決済の共通化が試みられている。利用者はその利便性が拡大したことに反応してプラットフォームの普及を拡大させていることが把握できた。
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