研究課題/領域番号 |
21300097
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
小見 志郎 県立広島大学, 経営情報学部, 教授 (90405506)
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研究分担者 |
粟島 浩二 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (10405508)
金森 剛 相模女子大学, 人間社会学部, 准教授 (50500914)
村上 恵子 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (90325142)
五百竹 宏明 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (50264916)
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キーワード | 電子マネー / 交通系ICカード / サービスイノベーション / ネットワーク効果 / プラットフォーム / ブランド評価 / ネットワーク効果増幅メカニズム |
研究概要 |
本研究は.交通系電子マネーの地方都市での普及過程を追跡し、電子マネーの利用動態や利用者意識を分析することを目的としている。それによって、第1に、電子マネーの地方都市での普及のスピードと条件を研究することができる。第2に、電子マネーのネットワーク性がもたらす社会情報的なサービス価値をサービスイノベーション論からアプローチすることができる。 上記の第1の研究目的に対応して、これまでの3カ年の研究は、広島での電子マネーPASPYの普及プロセスをフィールド観察やアンケート調査で追跡してきた。その普及スピードや利用者の態度などが観察できている。しかし、期間が限定されるため、電子マネーの拡大等のプロセスを深く分析するためには別の電子マネーとの比較考量が必要となってくる。そこで、電子マネーの普及過程を、導入期・拡大期・浸透期とし、福岡都市圏、東京圏での利用者意識を探ることで、広島都市圏での利用者意識との比較を行った。いずれも、インターネット・アンケートを実施した。その結果、電子マネー採用のイノベータ像やブランド評価の利用者意識など有意な考察ができている。 当該年度は、研究目的の第2の視点、電子マネーのもつネットワーク性における社会情報サービスイノベーション論に重点をおいた。電子マネー普及におけるネットワーク効果の定量的な分析である。その分析モデルにおいて、多項ロジットモデルの適用を図った。どのような利用者属性が電子マネーのブランド選択に大きく影響しているかを分析するモデルで、利用者が選択肢の中から効用が最大となる選択肢を選ぶことが定量的に実証された。そのネットワーク効果をさらに拡大させる利用者間の行動を「ネットワーク効果増幅メカニズム」ととらえ、新たな知見を導くことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、電子マネーの普及過程を実証的に研究することが大きな目的である。このため、平成21年度から23年度まで各年、広島でのフィールド調査ならびに広島(導入期に相当)、福岡(拡大期に相当)、首都圏(浸透期に相当)でのインターネット・アンケート調査も実施してきた。これらの膨大な観測データをもとに、イノベーションの実証分析を行うことができている。しかし、十分な分析と研究成果の仕上げが追い付いていないため、「概ね順調」とした。本年度(最終年度)は研究総括に重点的に取り組み、研究成果を公表していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は今年度が最終年度であり、これまでの研究成果を総括することにもっとも重点をおくことにしている。その総括の論点は3つある。その第1は、電子マネーの普及過程の実証分析を全体的にとりまとめることである。普及過程を導入期、拡大期、浸透期に分けて、利用者の意識変化をアンケート調査で追跡してきた。それらを総括する。第2は、電子マネーによるサービスイノベーションのメカニズムを解明することである。そのため、研究代表者が本研究にあわせて取り組んできたプラットフォーム論をもとに、電子マネーの導入期、拡大期、浸透期それぞれに普及促進、利用拡大のためのメカニズムとして、昨年度、「プラットフォームのネットワーク効果増幅メカニズム」という知見を得ることができたので、それをベースにサービスイノベーションの実態解明をとりまとめることができる。第3は、サービスイノベーションにおけるブランド評価である。電子マネー利用時のブランド選択要因をマーケティング・サイエンスの視点からアプローチする。 これらをもとに、最終的に研究成果をとりまとめ、学会等で公開する予定である。
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