研究概要 |
研究代表者は、わが国における多産多死社会から少産少死社会への移行過程を説明する人口転換論と移動革命論を再構築するために、古文書史料をデータベースに蓄積して、その記録内容を分析する「江戸時代における人口分析システム(DANJURO)」の開発を進めている。本研究では、DANJUROに蓄積されている史料をもとに、藩政村単位の人口構造と人口移動の分布を電子地図に表示して、時空間解析を行う「近代移行期の人口分布解析システム」を構築し、史料と分析方法を研究者間で共有する研究基盤をインターネット上に整備することを目的としている。 平成21年度は、藩政村の位置情報データベース構築に向けて、摂津国西部における藩政村の村境を設定するとともに、「幕末維新期人口史料」分析システムの充実を図った。 まず、『兵庫県史』の第4巻付図9にもとづき、摂津国八部郡、兎原郡、武庫郡、川辺郡、有馬郡に所属する藩政村、郡境、および国境の位置情報を採取した。さらに、輯製20万分の1地勢図にもとづいて、19世紀末の大阪湾における海岸線の位置情報を採取した。採取した位置情報を数値地図50mメッシュ(標高)上に表示して、本システムのベースマップを試作した。 つぎに、武蔵国多摩郡日野宿組合村々の史料を「幕末維新期人口史料」データベースに追加登録した。現在、本データベースには、明治初期の岩代国会津郡、大沼郡、武蔵国多摩郡における66村、約2,600世帯、約17,000人分の情報が蓄積されている。「幕末維新期人口史料」データベースから村や郡ごとに39項目の人口・家族指標を算出して利用者側コンピュータに表示する「幕末維新期人口史料」分析プログラムを開発した。「幕末維新期人口史料」分析システムを含むDANJUROは、インターネットから研究者間に公開している。
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