研究概要 |
本年度は記憶想起の際の内側側頭葉と連合皮質-特に動きの処理に関わるV5-における局所脳血流量をポジトロン断層撮像法(positron emission tomography : PET)で測定した。研究代表者は以前に行った研究において、有色であった図形を想起する際には、内側側頭葉と色情報の処理に関与する領域の両方が賦活することを明らかにしており(Ueno et al.,2007)、今回の研究は同様のパラダイムを用いて動きの情報に焦点をあてたものである。実験では動きを伴わない無意味図形・動きを伴った無意味図形の記銘の後、これら全ての図形とディストラクタを動きを伴わない状態で呈示し、記銘したものかどうか、そして記銘した図形であればどの方向に動いていたかを想起させる課題を施行し、PETにより局所脳血流量を測定した。その結果、動きを伴っていた図形を想起する際には、内側側頭葉と動き情報の処理に関与するV5領域の両方が賦活することが明らかとなった(Ueno et al.,2009)。これは記憶想起の際に内側側頭葉だけではなく、個々の記憶構成要素に関与する連合皮質の再活動が重要である可能性を示している。本年度はこの他に、再認記憶のパラダイムを用いた研究によって、パーキンソン病患者では嘘をつく能力が低下していること、またその背景として前頭前野の機能低下が認められることを、神経心理学的研究によって明らかにした(Abe et al.,2009)。
|