研究課題
本年度は、再認記憶の神経基盤の解明を目的として、健常被験者を対象とした脳機能画像研究とアルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)患者を対象とした神経心理学的研究を実施した。健常者を対象とした脳機能画像研究では、磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imagiag: fMRI)を用いて検討を行った。本研究課題は、実験刺激の視覚的特徴の再認課題(視覚的特徴再認課題)と、実験刺激の意味的特徴(名前)の再認課題(意味的特徴再認課題)から構成されており、この2つの再認記憶課題中の海馬の活動を比較することで、再認様式の違いが海馬の活動の変化をもたらすか検討した。その結果、新規刺激を呈示された時に左海馬領域の賦活を認め、視覚的特徴に注意を向けている場合と意味的特徴に注意を向けている場合で海馬の活動が異なることが明らかとなった。本研究結果は、再認記憶課題中の再認様式の違いにより海馬の活動が異なる可能性を示唆している(Hashimoto et al.,2012)。AD患者を対象とした神経心理学的研究では、(1)AD患者における虚再認の神経メカニズム、(2)AD患者における連合再認記憶の神経メカニズムついて検討した。(1)では記銘時と同じ刺激、似た刺激、記銘時には無かった刺激を用いた再認記憶課題を施行した。その結果、健常者と比べAD患者では似た刺激に対する虚再認の比率が高まった。本研究結果は、虚再認を引き起こす神経メカニズムの一端を明らかにした(Abe et al.,2011)。また、(2)では、記銘時と同じ刺激、呈示される位置が異なった刺激、枠線の色が異なった刺激、記銘時には無かった刺激を用いて再認記憶課題を施行した。その結果、健常高齢者に比し、AD患者では刺激自体に対する虚再認の割合だけでなく、呈示される位置についての虚再認の割合も有意に上昇した。本研究結果はAD患者における記憶成績の低下が、加齢による記憶成績の低下と異なるパターンを示すことを明らかにしたHanaki et al,2011。
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Hippocampus
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10.1016/j.neures.2010.11.001