視覚性ワーキングメモリ(VWM)における注意の選択、特徴統合、表象更新の3機能について行動実験、脳波測定実験、fMRI実験を並行して進めた。選択機能については、記憶内容に対する手掛かり効果を調べる課題を用いて、従来の空間位置手掛かりの効果と特徴値の手掛かりの効果を比較検討した結果、位置手がかりでは、知覚手がかりと記憶手がかりの効果量が同等であるのに対し、特徴手がかりでは記憶手がかりの効果量が減少することが分かった。また、記憶課題において特定の特徴を無視した場合の事象関連電位測定を行なった。この結果、記憶負荷の指標であるCDA成分が色や形状を無視する場合には増大するのに対し、位置を無視する場合には増大が見られないことが示された。特徴統合については、object reviewing paradigmという課題を用いて、反応時間分布解析を利用して、VWMにおける特徴の統合を検討した。物体ベースの反応促進効果を反応時間分布解析により、刺激のコード化時の成分と決定過程の成分に分離したところ、刺激のコード化時の効果が色、形状の特徴ごとに独立加算的に生じるのではなく、特徴の組み合わせに対して生起している可能性が示された。表象更新については、VWMが頭頂葉でトポグラフィックに表象されているという仮説を検証するfMRI実験と解析を継続した。この実験では、予め視覚皮質と頭頂葉のレチノトピー表象を標準的な手法で導出し、典型的な変化検出課題遂行時の脳活動を、このトポグラフィにマッピングした。その結果、記憶容量に相関する脳活動は、頭頂間溝のうち、一部の下位領域で顕著にみられ、頭頂間溝全般に記憶関連活動が見られるわけではないことを明らかにした。
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