研究課題
目的:従来、自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害において、社会的な能力が大きく取り上げられてきた。しかし近年、脳科学の発展とともに、自閉症児を含めた発達障害児の視知覚を中心とした認知機能が認識されるようになってきた。我々は、脳の発達の偏りこそが発達障害への連鎖の基礎にあるとの仮説に基づき、発達障害を早期発見する新たな試みとしての健診バッテリーを開発した。この健診バッテリーは9ヵ月~18ヵ月の乳児に適用され、1)再注視、2)顔と音声、3)色と運動、4)運動透明視、5)顔認知の5課題で構成されている。本研究の主要な目的は、これら5課題の妥当性を検討することにある。本研究では、この健診バッテリーを用いて、発達障害のリスクがある乳児とリスクが想定されていない定型発達児を比較し、5課題の不通過率を検討する。方法:9ヵ月~18ヵ月の発達障害リスク児35名を対象に、各被験者は月齢を変えて複数回の健診セッションを行い、合計137セッションの健診が行われた。また定型発達群として、79名の9か月から18か月の乳児に対しても、まったく同じ課題を行った。結果:健診バッテリーの各5課題について、発達障害リスク児の不通過率は、1)再注視7.3%、2)顔と声23.4%、3)色と運動13.1%、4)運動透明視7.3%、5)顔認知8.0%であった。9ヵ月と18ヵ月79名の定型児を対象とした我々のグループの先行研究結果によれば(金沢ら2012)、定型児における5課題の不通過率は1)再注視0%、2)顔と声5.0%、3)色と運動2.5%、4)運動透明視3.8%、5)顔認知3.8%であった。これらの値に対して、本研究の発達障害リスク群の不通過率は明らかに高い値であり、本健診バッテリーの妥当性が確認できた。
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