研究概要 |
電子化された計測・測定技術の高度な発展は,諸科学,産業界で大規模かつ高次元の多様なデータの獲得と蓄積を可能とし,データの中から有益な情報やパターンを効率的に抽出するための新たなデータ解析手法の開発研究が求められるようになってきた.本研究は,昨年度までの研究実績を踏まえてこれをさらに発展させて,本年度は以下のような研究成果を挙げた. 1.複雑な非線形構造を内包する現象のモデル化を目的として,ベイズアプローチに基づく非線形手法の一つである関連ベクターマシンについて研究し,予測に有効に機能する新たな非線形回帰モデリングを提唱した.また,確率分布モデルのベイズ推定である予測分布モデルを評価するためのモデル評価基準を導出した.現在,開発したモデリング手法を地球環境データ,生命科学におけるゲノムデータの解析に応用し,その有効性を検証中である. 2.自己回帰成分を持つ時系列的回帰モデルに対して,自己回帰の次数,説明変数や時間遅れ次数を選択する問題について研究し,重み付き最小2乗法による母数推定に関するGIC基準を求め,車両運転装置に応用する解析手法を開発した. 3.森林被覆率を人口密度と起伏量で説明する空間依存性をもつ柔軟な非線形回帰モデルを考察した.これは従来のパラメトリックな平均構造で記述されるモデルを大きく改良することがわかった. 4.分布関数及び密度関数のカーネル型推定量の高次漸近分布について研究し,正規近似の精密化であるエッジワース展開を導出することができた.またジャックナイフ及びブートストラップ分散推定量の平均2乗誤差について理論的な評価を求めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
非線形構造を内包する現象分析に有用なモデリングの研究を進展させ,研究成果を国際的なジャーナルに掲載することができた.また,解析的,代数的アプローチによる限界を,数学理論に計算アルゴリズムを融合させた方法で取り組み,実用的かつ効率的な手法の開発に目処がついた.
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今後の研究の推進方策 |
近年,システム工学,医用工学,生命科学,地球環境科学などの分野では,個体を特徴付けるデータは極めて次元が高く,かつ大規模データが獲得,蓄積されるようになり,現象分析に有効に機能するモデル構築のための発想を新たにした理論・方法論が必要となってきた.このため,解析的,代数的アプローチに計算アルゴリズムを融合させた方法で取り組み,実用的かつ効率的な手法の開発研究を,一層推進する.
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