研究概要 |
本計画では、ペプチドの溶解度をアミノ酸配列から計算するための手法として、まず全20種類のアミノ酸の「会合自由エネルギー」(△(G_<Aggr>)を実験的に測定し、会合自由エネルギーの加算性を仮定することで、任意のアミノ酸配列からなるペプチド・タンパク質の溶解性を計算するシステムを構築する。各アミノ酸の会合自由エネルギーは、「基準ペプチド」にそのアミノ酸を特定の個数付加した際の溶解度変化から決定する(詳細は平成21・22年度報告書参照)。 平成23年度には、平成22年度で会合自由エネルギーを測定したArg、Ile、Lys、SerとAspに加えて、Asn、Gln、Glu、Pro、Hisの値を測定し、ペプチド溶解性の計算を可能にした(未測定のアミノ酸の会合エネルギーの値には、化学構造が類似したアミノ酸の値を用いる)。さらに、溶解性をpH4.7と7.0の2つのpHで測定したことで、pH依存性を溶解性計算に取り入れることを初めて可能にした(親水性・疎水性モデルではpH依存性は考慮されていない)。さらに、モデルペプチドに用いたBPTIに該当アミノ酸を付加したX線結晶構造解析も行い、7つの構造をPDBに登録した(3AUB,3AUC,3AUD,3AUE,3AUG,3AUHと3AUI)。以上、任意のアミノ酸配列からなるペプチドの大まかな溶解性をpH依存的に予測することが可能となった。今後は、未測定のアミノ酸の会合自由エネルギ-を広い条件下で測定することで、ペプチドのより正確な溶解性を計算可能にする。
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