研究概要 |
神経成長円錐中のセカンドメッセンジャーは、成長円錐の伸展と反発を制御する重要な因子であるものの、それらを直背計測した例はない。従来成長円錐内のcAMP/cGMP濃度比が成長円錐制御に重要であることが報告されているものの、成長円錐伸展を制御すると考えられている細胞内カルシウム濃度変化および細胞骨格系との関係については不明な点が多い。本研究では神経成長円錐の運動制御を司るこれらセカンドメッセンジャーおよび細胞骨格分子について蛍光イメージング法と計算機シミュレーションによって明らかにすることを進めている。現在までに成長円錐内でcAMP,cGMP,Caを個別に計測する方法を確立した。また細胞骨格を形成しているアクチンとアクチンに結合することによりアクチンフィラメントの重合と脱重合を制御しているコフィリン分子を神経突起中で同時可視化することに成功した。また昨年度の成果である常微分方程式を基本とした成長円錐モデルに、空間情報を与える拡張を行った。成長円錐のある平面を正方格子に分解し、各格子ごとにcAMP,cGMPなどの濃度情報を格納させ、アクチン骨格の格子ごとの伸張(格子内アクチン濃度の上昇する)、縮退(格子内アクチン濃度の減少)を決定した。また刺激の方向性を決めるパラメータαを設定し、刺激に方向がない場合を完全なランダムウォーク、一方向から刺激が来る場合を直線移動として表現した。格子平面全体で見た時、周辺格子とのつながりで、成長円錐各部位の軌跡が解析可能となる。turningの指標には、一方向からの刺激に対する直線を基準に、直線から最大の距離を持つアクチン骨格軌跡上の点で近似直線を分割する操作を繰り返し、分割後の直線が元の直線に対して持つ角度でturningの方向を定量化した。
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