研究概要 |
本研究では,マイクロ・デバイス作製技術を利用して,従来法とは全く異なる発想の超小型の次世代型人工聴覚器(機械的振動-神経変換器)を開発するための基礎的な集積化技術を構築することを目指している.本研究課題が目指す方向は,マイクロ・デバイスと神経細胞の接合部となる小型インターフェースを開発すると共に,その間の信号を増幅・変換する電子・電気素子を一体型として組み込むことによって,デバイス自体がより高度な情報処理機能を提供するマイクロ・デバイスを作製し,その小型デバイスでヒトの感覚器特性の模擬を実現することである. 本年度は,本研究計画の初年度に当たるために,(1)人工基底膜,および,その電位計測装置の試作と(2)小型集積化した信号増幅器・電流刺激装置の開発の2点に重点的に取り組んだ.まず,(1)では,顕微鏡ステージ上に,人工聴覚デバイス,信号増幅器,および,AD変換器を配置したマイクロシステム計測系を構築した.また,ラットから取り出した聴神経,脳幹細胞を培養する系を構築し,整備した.また,(2)では,基底膜振動で発生する数μV程度の電圧振動を細胞内と同程度に増幅し,電流刺激で聴神経に活動電位を発生させるメカニズムを代用させる為に,従来の大型信号増幅器を5センチ程度のチップに小型集積化した.この結果,次年度に取り組む予定である増幅器と刺激系を一体化した64ch型の「バイオアンプ」とよぶシステムを製作し,人工内耳に特化した信号増幅器・電流刺激装置を開発する基盤ができた.
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