研究課題
神経新生、すなわち神経幹細胞の増殖、分化のメカニズムについて、各種成長因子やサイトカイン、あるいは転写制御因子に関する研究は進んできた。しかしながら、脳に多量に存在する脂肪酸の影響については、ほとんど解析が進んでいない。そこで本研究では、胎仔ラット、生後ラット、ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞に、in vitroにおいてアラキドン酸(ARA)またはドコサヘキサエン酸(DHA)を添加し、これらの脂肪酸が神経幹細胞の増殖・分化・生存に与える影響について解析した。まず胎仔ラットの大脳皮質原基から神経幹細胞をニューロスフェア法を用いて選択培養し、脂肪酸添加による神経幹細胞の増殖・分化・生存への影響を解析した。10^<-7>および10^<-6>MのARA添加によって、二次ニューロスフェアの数が有意に増加し、10^<-4>MのARA添加によって、二次ニューロスフェアの数が有意に減少した。また、10^<-7>MのDHA添加によって、二次ニューロスフェアの数が有意に増加し、10^<-6>および10^<-5>MのDHA添加によって、二次ニューロスフェアの数が有意に減少することが分かった。このことから、ARAおよびDHAはneuorgenicな神経幹細胞の増殖能を亢進することができる一方、高濃度では毒性を示すことが示唆された。10^<-9>~10^<-5>MのARA添加によって、b3-tubulin陽性細胞およびGFAP陽性細胞の割合に有意な差は認められなかった。また、同様に10^<-9>~10^<-5>MのDHA添加によってもb3-tubulin陽性細胞およびGFAP陽性細胞の割合に有意な差は認められなかった。このことから、ARAおよびDHAはneuorgenieな神経幹細胞の分化には効果を示さないことが示唆された。
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