研究課題
本年度は、野生型の胎仔ラットおよび生後ラット、野生型マウス胎仔および脂肪酸結合タンパク質遺伝子Fabp7のノックアウトマウス胎仔に由来する神経幹細胞を用いて、in vitroにおいてアラキドン酸(ARA)またはドコサヘキサエン酸(DHA)を添加し、これらの脂肪酸が神経幹細胞の増殖・分化・生存に与える影響について解析した。まず胎仔ラットの大脳皮質原基から神経幹細胞をニューロスフェア法を用いて選択培養し、脂肪酸添加による神経幹細胞の増殖・分化・生存への影響を解析した。継代数の少ない神経幹細胞は主に神経細胞に分化し、継代数の多い神経幹細胞は主にアストロサイトへ分化した。それぞれの神経幹細胞に対しARAまたはDHAを添加することにより、これらのPUFAsが神経幹細胞の増殖と分化に与える影響について解析した(Sakayori et al,2011)。主に神経細胞に分化する発生初期の神経幹細胞においては、ARA、DHAともにその増殖を亢進した。一方で神経細胞やアストロサイトへの分化に対しては効果を持たなかった。主にアストロサイトへ分化する発生後期の神経幹細胞においては、DHAはその増殖を亢進したものの、ARAは増殖に対しては効果を持たなかった。一方、分化に関しては、ARAはアストロサイトへの分化を、DHAは神経細胞への分化を亢進した。これらの結果から、ARAやDHAは直接的に神経幹細胞の増殖や分化を制御し、発生の段階に応じて異なる役割を担うことが示された。また、生後ラット側脳室壁および海馬由来のニューロスフェアアッセイ系の確立を試みた。胎仔由来神経幹細胞に比して、成体脳由来の神経幹細胞からのニューロスフェア形成率は低いことがわかった。更に、ARAやDHAと結合し細胞内においてPUFAの分布に関わる脂肪酸結合タンパク質Fabp7の遺伝子ノックアウトマウス胎仔を用いたニューロスフェアアッセイ系を確立し、DHAの影響について検証した。
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Genes Cells
巻: 16(7) ページ: 778-790
PLoS ONE
巻: 6(11) ページ: e27628
10.1371/journal.pone.0027628