研究課題
キノコ体と外部を結ぶ神経を体系的に同定するため、細胞系譜に従って神経をラベルする手法を用いて脳の神経をユニットごとにラベルし、詳しく構造を解析した。脳は全部で約100個の神経幹細胞から構成され、従って合計で約100個の細胞系譜依存ユニットが存在することになる。このようなユニットごとに脳をラベルした結果、これまで同定してきたキノコ体の入出力神経群が、数個のユニットによって特異的に形成されていることが分かった。学習中枢への入出力を担う神経が特定の神経幹細胞によって作られていることは、脳の発生過程と機能分担の関わりを知る上で重要な知見である。また、これらの入出力神経が集中的に投射するキノコ体外の領域と、脳のその他の領域を結ぶ神経経路群も、さまざまな回路が同定された。その多くは特定の感覚一次中枢には由来せず、高次の脳領域を介して接続していた。キノコ体への入出力の機構をさらに詳しく調べるため、ドイツの研究グループと共同してこれまで同定した入出力神経の生理学的解析も行った。入出力神経の一部はドーパミン性神経であることが分かっていたが、これらの神経の一部を特異的にブロックすると匂いと電気ショックの連合学習記憶の特定のフェーズが選択的に阻害され、逆にこれらの神経を特異的に刺戟すると電気刺激なしでも連合学習を惹き起こすことができた。これによって、キノコ体に入出力する神経の特異的な一部が、特異的な学習記憶に必要な信号を担っていることが明らかになった。
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J Comp Neurol
巻: 518 ページ: 4147-4181
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