研究課題
マウス海馬ニューロンの培養系を用いて、グルタミン酸受容体刺激後発現誘導される遺伝子をマイクロアレイにて網羅的に解析したところ、刺激後速やかに転写量が増加する早期転写型遺伝子群と刺激後緩やかに増加する遅延型遺伝子群に分類されることが分かった。それぞれの群のクロマチン修飾の差異をクロマチン免疫沈降法にて検討した結果、遅延型遺伝子群でピストンH3の9番目リジンのメチル化(H3K9me)が高かった。ヘテロクロマチンタンパク質HP1はH3K9meに結合しヘテロクロマチン形成に寄与しているが、細胞分裂期にH3の10番目セリンのリン酸化(H3S10p)に伴い解離することが知られている。HP1のクロマチンからの解離がニューロンでの転写制御にも関与している可能性が考えられた。遅延型遺伝子群ではグルタミン酸受容体刺激後にH3S10pが増加し、HP1βの結合が減少することが分かった。しかし、H3K9meの低い早期群でも刺激前にHP1β結合が認められたことから、H3K9me修飾とは独立した現象であることが示唆された。現在、HP1βの標的遺伝子に関し、ゲノムワイドな解析を計画している。さらに、別のクロマチン関連分子としてリシカーヒストシH1のダイオナミクスをFRAP法にて検討したとこち、H1は神経活動に依存してハイパーダイナミックな挙動を示すことが分かった。これに関与する機構としてH1のポリADPリボシル化を想定し、責任酵素であるPARPの阻害薬にて検討した結果、H1のハイパーダイナミックな挙動は抑制された。これらの結果は、ニューロンの細胞核内では神経活動に依存してダイナミックなクロマチン制御が行われていることを示すものである。今後、どの遺伝子がこのダイナミックな制御下にあるか、ゲノムワイドな検討を予定している。
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