研究課題/領域番号 |
21300125
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 功 九州大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (20183741)
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研究分担者 |
渡辺 茂 慶応義塾大学, 文学部, 教授 (30051907)
坂田 省吾 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (50153888)
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キーワード | 脳の左右差 / 海馬 / 神経回路 / NMDA受容体 / 行動解析 |
研究概要 |
非対称な海馬神経回路の形成にMHCクラスI(MHCI)が関与している可能性を検討するために、MHCIの構成因子の一つであるβ2マイクログロブリン(β2m)をノックアウトしたマウス(β2mKOマウス)を用いた解析を行った。その結果、β2mKOマウスの海馬ではε2-nondominant型のシナプスが消失して全てのシナプスがε2-dominant型に変化しており、その結果、海馬神経回路の非対称性が完全に失われている事が明らかになった。この事実は、非対称な海馬神経回路の形成にMHCIが関与している可能性を強く示唆するとともに、免疫系タンパク質の中枢神経系における新たな非免疫的機能の存在を示している。これ等の結果はすでに生理学会等で報告して高い評価を受けるとともに、現在論文投稿を準備中である(担当、伊藤)。 また、β2mKOマウスの行動解析が進行中であり、予備的解析の結果β2mKOマウスは空間記憶の保持において劣る事を示唆する結果が得られている。今後さらに精度の高い解析を計画している(担当、渡辺)。 さらに、本年度から広島大学の坂田が共同研究者に加わり、海馬θ波の解析を開始した。これによってこれまで手つかずであった、脳の非対称性に関するネットワークレベルの解析が可能になった。本年度は、無拘束マウスから安定にθ波を計測する測定系の技術確立を行った(担当、坂田)。 また当初計画にはなかった2系統の遺伝子改変マウスの生理学的な分析を開始した(担当、伊藤)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した研究課題のうち、ivマウスの行動解析に関してはすでに一昨年論文発表した。β2mノックアウトマウスの解析に関しても本年度に学会報告を行い、現在論文を執筆中である。また、当初予定していたノックアウトマウスの作製は中止したが、かわりに平成23年度から海馬θ波の解析を新たに検討課題に加え、本年度内にマウスを用いた測定系を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していなかった2系統の遺伝子改変マウスを分析する必要が生じたため、新たな遺伝子改変動物の作製は中止した。このために共同研究者を1名削除した。また、当初は検討課題に挙げていなかった海馬θ波の解析を実施する事とし、このために共同研究者を1名追加した。来年度は、現体制のまま予定通りの研究を実施する。
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