これまでの研究で、頭頂葉内側領域および海馬傍回のニューロン群が広い空間のナビゲーションに関連していることがわかって来た。広い空間内のナビゲーションにおいて、頭頂葉内側領域と海馬傍回との間にどのような機能的差異が存在するのかを調べることを目的として、同じ課題を用いて両方の領域から単一ニューロン活動を記録し、本年度は特に海馬傍回のニューロン群の解析をおこない論文を作成している。 頭頂葉内側領域のニューロン群は、場所情報と運動情報の組み合わせる、ナビゲーションのモデルにおける道順知識のリストの要素に相当するとともに、バーチャル空間内の特定の場所で活動するいわゆる場所ニューロンに相当するニューロン群も見つかった。一方、海馬傍回では、位置の情報とは関係なく、風景の視覚情報に反応するニューロン群が見つかった。 頭頂葉内側領域のニューロンはその特性から、1)位置選択的ニューロン、2)運動選択的ニューロン、3)ナビゲーション(位置・運動選択的)ニューロンに分類できるのに対して、海馬傍回のニューロンは、1)風景選択的ニューロン、2)ゴール選択的ニューロンに分類できた。 この結果は頭頂葉内側領域のニューロンは運動情報の選択に係わり、海馬傍回のニューロンは主として風景情報を処理している可能性を示唆する。また、頭頂葉内側領域への場所情報は海馬、海馬傍回で扱われる風景情報がその起源になっていると考えられる。
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