研究課題
アデノシンは、A2A受容体を活性化して睡眠を誘発する。A2A受容体は大脳基底核間接路の線条体淡蒼球系神経細胞に多く発現している。ここではドーパミンD2受容体とA2A受容体が共発現し、運動、習慣形成、報酬など覚醒にかかわるすべての活動に寄与している。パーキンソン病のような低ドーパミン状態では覚醒の維持が損なわれるが、大脳基底核におけるA2A受容体の睡眠と覚醒の制御への寄与に関しては未だ不明である。本研究では、以下に示す領域特異的に遺伝子導入するための強力なツールを用いて、大脳基底核に発現するA2A受容体の覚醒意識に関する役割について研究を行った。具体的には、Cre/loxシステムを使ったA2A受容体のコンディショナルノックアウトマウス、およびアデノ随伴ウィルスを用いてA2A受容体のshort-hairpin RNAを局所的に導入することにより脳内の特定の部位でのA2A受容体の発現を抑制したラット、光感受性チャネルロドプシンや、デザイナードラッグのみで活性化するデザイナー受容体(designer receptors exclusively activated by a designer drug:DREADD)などの遺伝子改変受容体-チャンネルシステムを用いて、in vivoでの刺激と抑制を利用して大脳基底核のA2A受容体発現神経の活動を調節した。本研究により、カフェインの覚醒効果は、側坐核殻部の神経に発現するA2A受容体に決定的に依存し、これらの神経の一過性の活性化が睡眠を誘発することが明らかとなった。これらの実験結果から、側坐核に発現するA2A受容体が睡眠覚醒を制御する鍵となることが示された。腹側線条体は行動機能を統合する特別な能力を持っているため、意識により制御された睡眠覚醒おいて重要な領域である。我々は、動機付けが睡眠覚醒を制御する重要な基本原理ではないかと考えている。
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