研究概要 |
SNAP-25はシナプス膜に存在するt-SNAREタンパク質で、開口放出によるシナプス前部からの神経伝達物質遊離に必須な役割を果たしている。我々は以前にSNAP-25のSer^<187>がプロテインキナーゼCによってリン酸化されると副腎髄質細胞腫細胞であるPC12細胞において神経伝達物質放出機能が促進されることを見出した。さらにマウスに冷水拘束ストレスを加えると、脳内のストレス反応に関わる部位を中心にSNAP-25のリン酸化が亢進することを見いだし、SNAP-25のリン酸化がストレスへの適応機構に関わっている可能性も明らかにした。脳におけるSNAP-25のリン酸化の役割をさらに明らかにするため、野生型およびリン酸化部位のアミノ酸置換によってリン酸化を起こらなくさせたノックインマウスの脳からシナプトゾームを調整し、PKCによるドーパミン放出の促進能を比較した。あらかじめ[3^H]-ドーパミン(DA)を取り込ませた野生型マウスのシナプトゾームをPDB(Phorbol 12,13-dibutyrate)で前処理しPKCを活性化しておくと、脱分極依存性のDA放出が顕著に促進され、この促進はPKCの阻害剤であるBISによって見られなくなった。一方ノックインマウスの脳から調整したシナプトゾームではPDBによるDA放出は認められなかった。以上の結果からSNAP-25のリン酸化は、成体マウスの脳でPKC依存的なDA放出の促進制御に必須な役割を果たしていることが明らかとなった。
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