研究課題
目的)本研究は、アルツハイマー病の分子病態進行におけるレニン・アンギオテンシン系の関与を明らかにするプロジェクトである。アンギオテンシン変換酵素(ACE)は、アルツハイマー病の原因分子amyloidβ蛋白(Aβ)を分解する酵素である。背景)アンギオテンシン変換酵素(ACE)は、アルツハイマー病の原因分子amyloid β蛋白(Aβ)を分解する酵素である。しかし、我々はACE-KoまたはACE-TgマウスとAPP-Tgマウスとの交配マウスを解析したところ、両方ともAPP-Tgマウスに比べて脳内Aβ沈着が増強することを発見した。これはACEが複数の機序でAβ代謝に作用していることを示している。一方、疫学研究ではACE阻害剤やアンギオテンシンII受容体阻害剤(ARB)が認知機能の増悪を予防するとの指摘があるが詳細は不明である。結果)本年度は、(1)ACEと脳内Ab代謝との関連を明らかにするために、ACE-TgマウスにおけるAPP代謝、ApoE発現量、Aβレベル等を解析した。その結果、ACE-Tgマウス脳では、APPおよびApoEの発現レベルの低下が認められた。野生型アストロサイトにアンギオテンシンIIを添加したところ、ACE-Tgマウス脳と同様の変化が認められ、アンギオテンシンIIの受容体を介する変化であることが示された。また、(2)加齢に伴って脳の慢性虚血が出現すると考えられるが、慢性脳虚血はアルツハイマー病の危険因子であることが示されている。本年度は、慢性脳虚血を加えたマウス脳において、ACE発現量が低下することを明らかにした。ACEはAβ分解作用を持つことから、慢性脳虚血はAβ分解能が低下することによってAD発症の危険因子となる可能性が示された。
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