前庭神経核は異なる電気生理学的膜特性をもつニューロン群により構成されているが、それらのニューロン群の前庭機能における役割については明らかでない。そこで、膜特性をもとに特徴づけられた個々の前庭神経核ニューロンにおいて、1)末梢前庭からの直接入力の有無、2)頭部回転方向への反応特性、3)頭部回転周波数に対する反応特性を調べることにより、前庭機能における役割を明らかにすることを本研究の目的としている。生後6-8週齢のラットにイソフルランの吸入麻酔を行い、外科的操作によりin vivo標本を作製した。ラットを回転台に設置した脳定位固定装置に固定し、パッチ電極を前庭神経核へ侵入させ前庭神経核ニューロンからパッチクランプ記録を行った。ギガオームシールを形成した状態(cell-attachedモード)で回転台を回転させて記録側と同側または対側への回転における発火頻度の変化を調べたところ、記録した前庭神経核ニューロンの多くは同側方向への回転のときに発火頻度を上昇させるタイプI型の反応を示した。cell-attachedモードの後、パッチ膜をruptureしてホールセル記録を行なうことを試み現在までわずかのニューロンにおいてしか成功していないが、その中のひとつは、2相性のスパイク後過分極を示し、スパイク間隔がほぼ一定な持続的な発火パターンを示した。この特徴は、我々のこれまでの研究により、グルタミン酸作動性ニューロンであることが示されている。
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