研究課題
HIV-1はヒトとチンパンジーにしか感染しないことから、サル免疫不全ウイルス(SIV)とHIV-1のゲノムの一部を組換えたサルヒト免疫不全ウイルス(SHIV)をエイズのモデル系として開発してきた。HIV-1はenv遺伝子により決定されるセカンドレセプターの指向性(CCR5やCXCR4)によって、その感染伝播や病態が大きく異なる。CCR5指向性ウイルスは、感染初期に検出されるウイルスであるためワクチン開発などに重要とされるが、サル動物モデルで扱われるSHIVにおいてCCR5指向性でありかつ中和抗体抵抗性を示すものは未だ少ない。そこで中和抗体抵抗性のCCR5指向性SHIVアカゲザルモデルを確立することを目的として以下の研究を進めた。ウイルスの共受容体決定部に相当するenvのV3領域に5箇所のアミノ酸置換を加え、既存のCXCR4指向性ウイルスであるSHIV-KS661をCCR5指向性のウイルスへ転換した。このウイルスはアカゲザル個体内で複製能を示し、in vivoでの順化を繰り返したところ3代目のサルで高い血漿ウイルスRNA量の持続が確認され、これを分離しMK38と命名した。MK38はCCR5指向性を維持しており、V3領域には復帰変異は認められなかった。MK38は、KS661や順化前のMK-1と比べ感染サル血漿中の中和抗体に対して抵抗性を示した。またMK38は、継代前は感受性であった抗V3モノクローナル抗体KD-247に対しても、中和抵抗性を示した。envの遺伝子解析を行った結果、KD-247対する中和エピトープは継代後も保存されており、V2領域で糖鎖修飾部位やチャージの変化を伴うアミノ酸変異が起きていた。中和抗体抵抗性を獲得した理由として、V2領域の変異によるenvの立体構造の変化やグリカンシールドによる抗体に対する立体遮蔽の可能性が示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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