研究課題/領域番号 |
21300153
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
庫本 高志 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20311409)
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研究分担者 |
大野 行弘 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (00432534)
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キーワード | 本態性振戦 / ポジショナルクローニング / 疾患モデル / ラット / 亜系統 / HCN1 / チャネル拮抗薬 / 行動薬理 |
研究概要 |
本年度の研究目的は、1)trm2の原因遺伝子同定(担当:庫本)、2)trm2遺伝子産物の拮抗薬剤を用いた振戦の誘発試験(担当:大野)、であった。 1) trm2は、ラット第2染色体上にあり、TRMラットの本態性振戦の発現に係わる。Trm2座位内に新たに3つのSNPマーカーを設定し、trm2のファインマッピングを行った。その結果、trm2を第2染色体47-51Mbの領域にマップできた。この領域には5個の遺伝子が既にマップされていた。これらの遺伝子のうち、Hcn1遺伝子を候補遺伝子とした。Hcn1遺伝子は、過分極で活性化される陽イオンチャネルHCN1をコードしている。振戦を示すTRMラットと振戦を示さないTRMRラットの脳からmRNAを精製し、RT-PCR法により、Hcn1発現量を解析したところ、両系統間で差異はなかった。次いで、Hcn1遺伝子のcDNA配列を決定したところ、TRMラットにいて354番目のアミノ酸をアラニンからバリンに置換するミスセンス変異(A354V)を見いだした。このアミノ酸置換は、TRMラット特異的であり、また、チャネルのポアを構成するP-loop領域に近接していた。従って、trm2は、Hcn1遺伝子のミスセンス変異であり、この変異はHCN1チャネルの機能を変化させる可能性があると考えた。 2) trm2遺伝子産物であるHcn1チャネルの振戦発現における役割を明らかにする目的で、TRMR (trm1のみ変異)ラットに、選択的Hcn1拮抗薬ZD7288を脳室内投与した。その結果、ZD7288は投与量に応じてTRMRに振戦を誘発し、Hcn1チャネルの機能不全がTRMラットの振戦発現に関与していることが示唆された。また、TRMラットにおける振戦行動の薬理学的解析を行い、(1)TRMラットの振戦特性がヒト本体性振戦とよく一致すること、(2)振戦発現にはノルアドレナリン神経系およびGABA神経系が深く関与していること、さらに、(3)大脳皮質下の領域では、脳幹部(下オリーブ核)および間脳(視床下部)に神経の異常興奮部位が存在することを明らかにした。
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