研究概要 |
本2型糖尿病マウスは、非肥満性で常染色体性優性遺伝を示す新規変異マウスである。今年度は、原因遺伝子のポジショナルクローニングを行い、マウス第8染色体のセントロメア付近に存在する遺伝子(仮称dms)を特定した。さらに、変異dmsのホモ説合体は、生後4日で死に至る新生児糖尿病の新しいモデルとなることを発見した。また、従来多因子疾患で解析が困難とされていた糖尿病の修飾遺伝子を明らかにするためのツールとして、変異dmsを遺伝的背景の異なる8系統の近交系および4系統のアポE欠損高脂血症マウスに導入したコンジェニック糖尿病モデルの樹立を推進した。 1.原因遺伝子のポジショナルクローニングに成功した。これまでにDms遺伝子と糖尿病を結びつける報告は皆無であった。 2.変異dmsのホモ説合体は、新生児糖尿病の新しいモデルとなり、ヘテロ接合体は2型糖尿病のモデルとなることが判った。2型糖尿病の発症時期、性差および重症度は各コンジェニック系間で多様に異なった。 3.コンジェニック糖尿病モデルの継代は、JF1,BALB/cおよびNC/Nga系は、N17世代、AKR,C3H/H,C57BL/6およびDBA/2系はN12からN14世代に達した。 4.C57BL/6系において腎臓の病理学的検索により、糖尿病性腎症モデル樹立の可能性が認められた。 5.今年度までに糖尿病網膜症、白内障などの表現型は認められなかったが、コンジェニック化が進んだ系統について、加齢個体に伴う発症等にも注意深い観察を行い、網膜症、白内障の発見に努める。 6.動脈硬化感受性系のC57BL/6および抵抗性系のBALB/c、DBA/2およびC3H/Heマウスの4系統アポE欠損コンジェニック高脂血症マウス(SHLマウス)との合併型モデルの樹立を推進した。
|