本研究では、高価な磁気シールドルームを必要としない、通常の病院の環境で計測可能な可搬型胎児用心磁図計測装置(心磁計)の開発、および胎児心磁図の信号処理・解析から自律神経活動を指標とした胎児の成熟発達過程の解明・評価を行う。本年度は、以下の内容を実施した。 ・磁気シールドルームを必要としない超高感度ワイドレンジ型SQUID磁束計の制御回路として、高速動作を目指したPLD(ロジックデバイス)を用いた並列演算型の回路の設計と試作を行った。現時点では、原理的な優位性を確認したが、デジタル素子によるノイズの影響を受けて、試作回路の安定動作が不十分な状態である。このため、再設計を行っている。(当初の計画でも十分に時間をかけている。) ・小型デュワー(心磁計用クライオスタット)の改良を行い、胎児用心磁計システムのプローブの設計・製作を中心に行った。現在、デュワーの真空部分が完成して、SQUIDセンサの設定部分の改良を行っている。 ・新型インフルエンザの影響を受け、病院内での検査など新たに倫理委員会の承認が必要となったため、2010年3月4日の岩手医科大学の倫理委員会で承認を得た。 ・胎児心磁図のノイズ除去用信号処理プログラムの開発を行った。胎児心磁図は、大人の心磁図に比較して100分の1程度(約10^<12>T)と非常に微弱であり信号ノイズ非(SNR)が非常に悪い。したがって、独立成分分析やウェーブレット変換を組み合わせたノイズ除去用信号処理プログラムの開発し、SNRの向上が得られた。また、周波数解析用に連続ウェーブレット変換を用いたプログラムを開発中である。
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