研究概要 |
発光プローブの弱点はRI標識プローブに比して組織透過性が低く、近赤外波長を用いても数cmの深さまでしか到達しない。また、イリジウム錯体は比較的発光効率(量子収率)がよいが、それでもフルオレスチンやインドシアニングリーンに比べると効率が悪い。そのためにより発光効率のよいプローブを得るために 1)組織透過性 2)発光強度の増加 3)低酸素組織集積性 の3つの条件を検討した。まず、組織透過性であるが、発光プローブに修飾を加えて励起・検出波長を近赤外領域にシフトさせ、比較的発光量子収率をよく保つBTPHSAを作成した。このプローブは体表から約1cm深部の癌を可視化した(Cancer Res70:4490-98,10)。次に発光強度の増加をFRETの原理を用いて励起光アクセプター(例えばクマリン)からエネルギードナーBTPを光らせる技術を試みた。しかし、in vitroでは理論通りにドナープローブの発光を増加させることができるが、細胞実験では分子量が大きくなるために細胞膜の透過性が不十分で、実用化は困難であった。次に、BTP誘導体のNにDimetyl基をつけてN^+状態を誘導するとプローブの細胞膜透過性が激増することがわかった。この方法は分子量をそれほど大きくせず、方法的にも簡便である。事実、低酸素組織の発光は通常のプローブ投与量の1/10で可視化でき、非常に効率がよい。本年度は一昨年開発した長波長化プローブBTPHSAをこの様に修飾し、組織集積性を増加させる。したがって、低酸素組織の検出効率が増加するので内視鏡観察が容易になるはずである。
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